説明
1998年日本コロムビアからカセットで発売された音源が遂にCD化。
江州音頭の音頭取りとしても現役で活躍する浪曲師の天光軒新月。1998年にカセットテープでリリースされた本作は、発売当時江州音頭では珍しいマイナーで演奏され、音頭マニアの注目を集めた。今回は盆踊りでも使用できるようにイントロを除いた「盆踊り用」を加えて初CD化された。シンセサイザーと女性コーラスによるドラマチックな演奏は、音頭ではとても珍しい。(いちばけい)
「さてこの天光軒新月師は、芸名の示す如とおり3代目天光軒満月門下の浪曲師でもあるが、江州音頭に入ったのは浪曲よりも早く、すでに十二才の時に女流の小春師に師事したという。そしてこんにちも毎年高槻市の「とんだ祭り盆踊り」を始めとして、各地で数名の門下生とともに活躍し、また江州本場の音頭師諸氏とも交流を広めている。レコーディングはせ初めてだが、若い時からかねがねオーケストラ伴奏の江州音頭を吹き込むのが夢だったとか。その夢がめでたく実現したこのカセットテープは、シンセサイザーを活用した伴奏ながら、16ビートのシャレた感じのリズムに愁い節のマイナー音頭を見事に乗せて、本格的なプロの女声コーラスの囃しに支えられての素晴らしい出来ばえで、さぞや老若男女すべての音頭好き人間のハートを捕えることであろうと期待している。」(村井市郎 解説より)
■曲目
1. 江州音頭葛の葉白狐伝(歌入り) (13:13)
2. 江州音頭葛の葉白狐伝(カラオケ) (13:12)
3. 特別編集盆踊り用 (12:23)
■収録曲について
本作の元となった物語は、人形浄瑠璃や歌舞伎の『蘆屋道満大内鑑(あしやどうまん おおうち かがみ)』、通称「葛の葉」と呼ばれる古典で、いろいろな形で伝わる物語。舞台は、和泉国の信太の森(現在の大阪府和泉市)で、自分を助けた安倍保名(あべのやすな)を守るために葛の葉姫に化けた白狐が恋に落ち、子・安倍童子丸(あべのどうじまる、後の陰陽師安倍晴明)をもうける。この曲では、葛の葉が二人と別れる理由を童子丸に言い聞かせ、そして保名あての文をしたためる場面をクライマックスに唄われている。
このマイナー調の江州音頭は、天光軒新月の師である桜川小春から教わったもので、小春自身も女流芸人であった中村力春から口写しで教わったという。そしてこの曲のアレンジは、それまで江州音頭とは縁のなかった在阪の音楽家浅野博司とNHKの素人のど自慢のアコーディオン奏者として著名な杉村寿治によって行われ、お囃子には、音大出身の女性コーラス(現在もプロシンガーとして活躍する)という異色のコラボとなっている。
また、このCDには、盆踊りなどで踊りやすいようにイントロ部分をカットしたものを「特別編集盆踊り用」として収録されており、踊りの練習などでも使いやすくなっている。
■天光軒新月のプロフィール
大阪府高槻市出身
1965年 江州音頭を桜川小春師に師事
1971年4月浪曲師・三代目天光軒満月師に師事。
同年7月 奈良県五條市民会館で「佐渡情話」で 初舞台。
同年同月 天光軒小満月として道頓堀朝日座に出演
1976年8月 天光軒新月と改名。
1991年 浪曲『越前竹人形』(キングレコード)
1998年 江州音頭『葛の葉白狐伝』(日本コロムビア)
また、1984年桜川唯丸会結成10周年記念盆踊り大会出演。2019年大阪府知事表彰文化芸術功労賞受賞。陰旋律の独特な江州音頭を伝える。
浪曲:「父帰る」「召集令」「二等兵物語」「美しき罪」「荒城の月」「足軽物語」「嵐の孤児」