説明
現代ミシシッピブルースの最重要人物、最期の録音。
父であるジュニア・キンブロウの未発表楽曲も含む渾身の演奏を収めた、
不遇の巨人のドキュメンタリー。
ミシシッピ北部の伝説的なブルースミュージシャン、ジュニア・キンブロウの息子であり、昨年7 月に亡く
なったギタリスト、デイヴィッド・キンブロウ・ジュニアは現代のブルースシーンで最も才能に溢れミュージシャンの一人だった。父のスタイルであるコットン・パッチ・ソウル・ブルース (ジュニア・キンブロウが
確立した、R&B やソウルの影響を強く受けたミシシッピ北部特有のブルース・スタイル) を継承しながらも
アーバンなR&B のテイストを加えた彼のスタイルは唯一無二であり、シーンの中でも絶対的な存在感を放っ
ていた。一方で二度の投獄を経験し、晩年は癌と闘うなど彼のキャリア自体は決して恵まれたものではなく、生前にリーダー作としてリリースされたアルバムは僅か3 枚である。
本作はそのような不遇の巨人デイヴィッド・キンブロウ・ジュニアが、アメリカの伝統音楽の現在をアナロ
グ録音でドキュメントし続けているレーベル、ドルセオラ・レコーディングスのもとに遺した、生前最期の録音である。レコーディングは2017 年10 月に彼の自宅のフロント・ポーチで行われ、彼の楽曲や父であるジュニア・キンブロウの楽曲など計8 曲が録音された。そしてその中には、ジュニア・キンブロウが作曲しながらもこれまで世にでることの無かった楽曲『Say You Don’t Love Me』も含まれている。歌とエレキギターのみというシンプルな編成ながら、演奏は力強さと繊細さを併せ持った渾身の内容だ。
なおドルセオラ・レコーディングスのYouTube ページで公開されている本作のトレイラーは、デヴィッド
の最初期のプロデューサーを務めたエイドリアン・ピンソンと、実弟であるロバート・キンブロウ・シニアのインタビューを交えつつデヴィッド本人の魅力を垣間見ることが出来るものとなっている。
ジュニア・キンブロウが没して20 年以上経った今も、その独自性を維持し多くのミュージシャンから支持 され続けるミシシッピ北部のブルース。惜しくも病に倒れたデイヴィッド・キンブロウ・ジュニアは間違いなくその確立に最も貢献したミュージシャンの一人であり、本作で彼が遺したものは父への愛、故郷への愛、自身の不遇な生涯を歌とギターに乗せた魂の咆哮である。
■曲目
A面
1. Introduction (1:39)
2. Say You Don’t Love Me (4:36, Junior Kimbrough) *ジュニア・キンブロウ作曲による未発表曲
3. Done Got Old (6:51, Junior Kimbrough)
4. Half Past a Monkey’s Azz (5:31, David Kimbrough Jr.)
B面
1. I’m Leaving You Baby (5:49, Junior Kimbrough)
2. Meet Me in the City (2:32, Junior Kimbrough)
3. Poke That Pig (4:04, David Kimbrough Jr.)
4. Lonesome Road / Lord Have Mercy on Me (9:08, Junior Kimbrough)
*パーソネル:デイヴィッド・キンブロウ・ジュニア(ヴォーカル、ギター)
*録音:2017 年10 月8 日、ミシシッピ州ホーリー・スプリングス
*モノラル録音
▶日本語解説&ダウンロード・コード付き
■デイヴィッド・キンブロウ・ジュニア (David Kimbrough Jr.)
1965 年ミシシッピ州のホーリー・スプリングスに生まれる。父は伝説のブルースマンであるジュニア・キン ブロウ。6 歳から演奏を始め、父のスタイルを継承しつつ自身が好んだプリンスなどR&B の影響も受けた独 自のスタイルを確立する。父のバンドに参加することで頭角を現し、1994 年にアルバム「アイ・ガット・ザ・ドッグ・イン・ミー」でデビュー。ギター、ベースに加えキーボード、ダルシマーなど様々な楽器を操る稀有なブルースマンとしてミシシッピブルースシーンの中心人物としての立ち位置を揺るぎないものとしたが、二度の投獄などもあり商業的には不遇なキャリアとなった。晩年は病と闘いながらも演奏活動を続けたが、2019年7月4日に54 歳という若さで死去。