説明
パリ近郊に生まれ、この美しい地方に激しい愛着を抱いているマルク・アントニーは、1970年代初頭にヴィエル・ア・ルーという楽器と出会っている。同時に彼はフランスのトラディショナル音楽、とりわけ、オーヴェルニュ地方とリムーザン地方の音楽に情熱を抱くようになる。トラディショナル音楽のグループ、「カフェ・シャルボン」と「コンパニー・シェ・ブースカ」の創立メンバーとなり、彼は多岐にわたる音楽分野で、舞台経験を積んでいった。「コンパニー・デ・ヌフ・トリビュ」の一員として、「テナレーズ」をはじめ、さまざまな音楽グループの中で演奏している、このCDの内容は、彼のヴィエル・ア・ルーという楽器についての探究のほんの一部を伝えるものである。
フランスの多くの地方に、それぞれ違った伝統的なヴィエル・ア・ルーの演奏様式があるが、一様にそれはダンスと結びついている。ここでの私の仕事はその一覧表をつくることではない。また、ヴェエル・ア・ルーに固有の伝承音楽目録を復元することでもない。しかし、私はその範疇に留まっておくために、一種の歯止めとして、選曲の範囲をトラディショナルなダンス音楽と、その枠を尊重したオリジナル作曲作品に限定した。私はこの楽器の演奏法を、私が探究した様々な演奏様式の要素に基づいて構成したが、その探究はヴィエル奏者たちはもちろんのこと、ヴァイオリン奏者たち、カブレット演奏家たち、アコーディオニストたち、コルヌニューズ奏者たち、さらに歌手や踊り手たちにまで及んでいる。私はこれら多くの演奏家たちを聴きこみ、 一部の人たちとは会って話をきいた。これらすべてのことが私にとって伝統音楽ということばの独特の使い方を理解する上で大変有益であったし、また私の演奏法と今日の音楽家としての私の感受性を培う手助けともなった。
ヴィエル・ア・ルーという楽器の歴史は古く、大体1千年を数える。19世紀に至ってこの楽器はほとんど製造されなくなったが、1970年代になってたくさんの楽器製造職人が、この楽器の構造と機能を改良させることで、楽器製造を再開した。このCD録音で使用したアコースティック・ヴィエルを作ったジャン・リュック・ブレットン、また私が現在使用しているエレクトロ・アコースティック・ヴィエルの原型を1990年に作り上げたドニ・シオラといった人たちである。
本CDはカンタル県の音楽が多いことがひとつの特色となっているが、本作品を同県とその音楽をこよなく愛するパトリック・モナと、ヴィエル奏者で多くの伝統音楽家から採譜につとめたピエール・アンベールに捧げる。また、オリヴィエ・デュリフ、ミッシェル・エスブラン、ノエル・リュコス、シルヴィオ・ソアーヴ、ベルナール・シュベール、ジャン=フランソワ・ヴロにも感謝する。
1. ある夜私に訪れた幻想 – 扉の前で3回 – ステ・ジェルバジオ
2. パストウレル・デライ・ライガ – いつかそこで散歩を
3. アリバの行進曲 – 友よ良き友よ
4. ナイ・シンク・ソス – サン・ドナのブーレ
5. 5時17分
6. 今日は4月1日 – さらば私の友よ
7. ノーボディー・ノース – 二拍子の範囲で
8. ジュールのワルツ
9. グリッサンド・スコティッシュ – シャンブレのストティッシュ – マニゲット
10. ビヤン・ル・ボンジュール・ジャヌトン – シャブリエのマズルカ
11. トロップ – ラ・トランカード
12. オーのブーレ – レース – イチエ爺さんのブーレ – セットの死
13. 内側の場所
14. トゥー・ミ – ノン・リヤン・ドリアン
15. 二度と会わない待ち合わせ – オプコルデ
16. 歌を聞きたい人はいるかい? – シャブリエのポルカ
17. ウート・アウト – 石を転がせ
18. カジ・モダル
19. 泉の後悔 – アーティソンズ・ヴァルス