説明
1950年代。
まだ性の解放も女性の自立も認められていなかった時代。
彗星のごとく現れた、一人の「自由な女性歌手(シンガー・ソングライター)」。
シャンソンでは同じ時期にデビューしたジョルジュ・ブラッサンスと比較された。
そして、そのあまりに「自由」で「何者も恐れなかった」彼女は、デビューから十数年で、芸能界から「消された」。
この第二集には、ブラッサンスや若き日のレオ・フェレのカヴァー曲など、1959年から最後の64年録音まで、58年来日時に録音された曲も収録!
ニコル・ルーヴィエ(1933-2003)は、おそらくフランスに登場した最初の女性シンガー・ソングライター。独学でギターと作曲を習得。16歳の時に書いた最初の小説が1953年に刊行され、その2週間後には自作自演歌手としてデッカ・レコードと契約する。
こうして1953年、ニコル・ルーヴィエは小説とシャンソンの両方で、華々しくもスキャンダラスにその姿を現した。それは幼さを残す丸い輪郭の顔に大きな目をした黒髪ショートカットの娘だった。修道女のような衿のつまった長衣に身をつつみギターを抱えて歌うさまは中世の吟遊詩人を思わせた。
何ものも恐れない自由な女性ニコル・ルーヴィエは、レコードは65年を最後に、詩と小説は68年を最後に、ニコル・ルーヴィエは人前から姿を消す。南仏へ、そしてイスラエルへ、彼女は人目から遠く離れて35年間、静かに詩と作詞作曲を続けていた。そして人々から忘れ去られた2003年春、70歳を前にしてニコル・ルーヴィエはガンで病死。
芸能界を敵に回したために芸能界から消された自由の女性歌手は、その後も大レコード会社によってそのレコードがCD復刻されることもなく、音源は封印されたままであった。しかし、発表後50年経ってそれがパブリック・ドメインになったのを機会に、フランスの小さなレコード会社ILDが、1953年から57年までのルーヴィエのレコード録音26曲を1枚のCDとして復刻した(『忘れじのニコル・ルーヴィエ』 オルターポップ ERPCD-16005)。
この第二集には58年来日時(2ヶ月にわたるツアー)に録音した⑰(一部日本語で歌っています)、ジョルジュ・ブラッサンスやシャルル・トレネ、そして若き日のレオ・フェレらの曲をカヴァーした8曲、そして59年から65年にかけて録音されたオリジナル曲が収録されている。特に65年に録音された最後の4曲は、静かにそして凛としたニコルの歌、そしてフランソワ・ローベによる繊細なオーケストレーションとあいまって素晴らしい出来になっている。自由に愛する人と愛し合える世界を願い、それが叶わなかった時代に生きたニコルの歌は、伝説となり、時代を経た今もその輝きを失っていない。一人でも多くの人にニコルの歌を聴いて欲しい。
ボーナス・トラックとしてニコルの曲をカヴァーしたリュシエンヌ・ドリールの2曲、ノエル・ノルマンの1曲、そしてトニー・ミュレナによるアコーディオン・ヴァージョン1曲を収録。
■2011年に発売された『ニコル・ルーヴィエ/忘れじのニコル・ルーヴィエ2』の廉価盤再発です。
曲目
1. エレーヌ
2. 偶然に起こることなどない
3. 大切なこと
4. どこかよそへ
5. 知らせの途切れた私のいい人
6. ムッシュー・ヴィクトール・ユゴー
7. エレーヌの木靴
8. ミアルカ
9. くるみの中には
10. 悪魔と奇蹟
11. テッサの歌
12. 鳥を驚かすから
13. 俗物ども
14. 限りなき愛
15. 果てのない道で
16. 新しい年が来た
17. ミアルカ(日本語)
18. 30歳にボンジュール
19. あなたの知っている村
20. 未来の子供たち
21. たぶん昨日
(ボーナス)
22. 誰が私を解き放ってくれるの(リュシエンヌ・ドリール)
23. 知らせの途絶えた私のいい人(リュシエンヌ・ドリール)
24. 誰が私を解き放ってくれるの(ノエル・ノルマン)
25. 誰が私を解き放ってくれるの(トニー・ミュレナと彼の楽団)