説明
前作1stアルバムから約2年、ミニアルバムが届けられた。
6曲中オリジナル作品は、1曲で、他5曲は、カバー曲であるが、通常歌われているカバー集とは、ちょっと意味合いが違う。コンセプト解説にもあるように、一つの文庫作品と見立てて、構成されている。
カバー選曲の視点もさることながら、音楽も含めた大きな意味での作品と言うことで、
大変面白い試みだ。
冒頭は、ボーカルのみで多重録音という昨今では珍しくないかも知れないが、高音で特異な声の持ち主である彼女から発せられる”声”は、ブラジル=夏、という安易なイメージは沸かない。逆に深々と冷える雪解けの季節に唄う吐息が白く寒空に消えていくような神聖なイメージを沸き起こされる。
2曲目以降もシンプルな編成で、前作同様ガットギター前原氏との正に「唄とギター」である。サウンドエフェクト、エレキギターで参加の田辺氏の効果も大きく、独特の世界観へ誘ってくれる。
彼女の歌は、良い意味でブラジル、ボサノヴァしていない。本当の意味でのポプラールな歌で、そこに潜む影と一言一言、一音一音がとても丁寧に唄われ、演奏されているので、聞き耳を立ててしまう。
更に、彼女の発するスキャットがまた素晴らしく、練習の成果と言うよりは天性のものを感じる。
ナチュラルでいて狂気、寒気の中での温もり、日常の中の非日常、あらゆる普通の生活の中でほんのり色づけしたかのような気持ちよい異質、それが行川さをりだと思う。
コンセプト
Fading Time(褪せていく時) ※紙ジャケット特殊サイズ
CD「Fading Time」は、何かが起きた後の感情の変化など自分自身の中で後追いするように記憶が褪せて変わっていく時差を描いたものです。ストーリーのある6曲を収録し、「音楽で読むショートストーリーを収めた文庫CD」をコンセプトに制作しました。絵画には題名がついており、題名により具体的な印象が意味付けられるような作品があります。今回の曲には短い文章と題名をつけて、ストーリーの導入を日本語で読んでから、本編の異国の音楽を小説のように聴く「文庫CD」としてお楽しみいただけたらと思っています。
行川さをり
曲目クレジット
右側の日本語は、写真のキャプションのように、イメージを伝えるための別題名を各曲に自分でつけたものです。
1. Cair da Tarde (Villa Lobos / Dora Vasconcellos) / 夜のこだま
2. Imagina (A.C.Jobim / Chico Buarque) / 月窓
3. Aguas de Marco (A.C.Jobim) / 雨粒の約束
4. Soundless Word Fades Modigliani Blue eyes (S.Namekawa / T.Maehara) / 雌しべのこと
5. Velho Companheiro (Claudio Nucci / L.F.GonAalves) / 不在の刻印
6. Travessia (Milton Nascimento / Fernando Brant) / 記録者の朝
member
行川 さをり:vocal
前原 孝紀:classical guitar
田辺 玄:electric guitar, sound effects
プロフィール
【行川 さをり vocal】”