説明
「年金は減らされ 保険料は値上げされ 追いつめられた全国三千万の老人は起ち上がった」
年金? 後期高齢者医療制度?? 怒れるオヤジたち! オバハンたち!
いま、団塊の世代からの渾身のプロテストとメッセージを聞け!!
団塊の世代から渾身のメッセージ。長いブランクを清算して音楽シーンに戻ってきた藤村直樹は彼が属する「団塊の世代」の一周遅れのトップランナーなのかもしれない…。本作はタイトル曲一曲、およそ八分におよぶ大作。オビのコピーにはこうある。「年金は減らされ 保険料は値上げされ 追いつめられた全国三千万の老人は起ち上がった」。団塊の世代から高齢化社会への痛烈にして爽快なメッセージ。自らの〝老い〟を渇いた笑いに変えてしまうしたたかさとしなやかさ。関西フォークの哄笑する批評精神、未だ健在なり! そう、「年金」「後期高齢者医療費」問題が連日のように報道されている現在、オッサンたちの面白真面目な叛乱はいままさに開始されようとしている。さらに往年の名グループ、五つの赤い風船の長野隆がディレクション、演奏と全面サポートしているのも注目だ。2008年作品。
「働き終えた老人たちにきちんとした保障が与えられるシステムはこの日本で完全に崩壊し、青年だけではなく、人は一生荒野をめざし続けなければならず、老人たちは最後の手段として命を賭けて実力行使にでるというこの歌は、最初はおもしろいとにこにこ笑いながら聞いていても、最後には笑い事ではない事実を鋭く突きつけられ、顔面蒼白となる、何とも恐ろしいものだ。
ウディ・ガスリーに通じる伝統的なフォーク・スタイルで藤村直樹は『老人は国会突入を目指す』を淡々と歌っているが、その歌の奥には現実と未来とをしっかりと見据える彼の洞察力に満ちた目が光っている。間近に迫って来た、人類が初めて経験する21世紀の荒野での恐ろしい大虐殺(Massacre)の歌を、藤村直樹はぼくらに向かって初めて歌ってくれたのだ」(中川五郎ライナーより)
【藤村直樹 WHO?】
という人に。本作は京都在住のシンガー/ソングライター、藤村直樹のシングルCDである。藤村直樹は60年代、関西中心におこったフォークムーブメントの中心メンバーの一人だ。フォーク揺籃期にあって、未だこの国に根付いていなかった黒人ブルースやカントリーミュージックのスタイルを自家薬籠中にした、たしかな技巧と抜群のセンスはシーンの中で異彩を放った。また、中川五郎、金延幸子、西岡恭象等、後に日本フォーク/ロック史に名を留める逸材を数多く輩出したフォークキャンパーズのリーダー的存在としても活躍した。フォークキャンパーズの代表曲は『女の子は強い』が有名。このうたはタイトル通り、ウーマンリブの台頭という当時の時代風潮をコミカルにうたった軽快なナンバー。
当時吹き込んだ藤村名義の録音物はURCレコード(1968年発足・インディーズレーベルの草分け)初期に発売された『町工場のブルース』ただ一曲のみ。将来を嘱望されながらも、藤村直樹はたった一曲の録音をのこして忽然と姿を消してしまった伝説的シンガーとして(実状は医大に戻って、勉学に勤しんでいたのだったが)、長い間、フォーク愛好家達によって語り継がれてきたのである。
さらに最近では、故・高田渡氏の晩年の日常を淡々と記録した映画『タカダワタル的』に登場する、高田の相談医としての藤村を知る方も少なくないだろう。
近年ふたたび、音楽活動を再開し、オフノートからデビュー30年目の初アルバム『逃避行-めりけんじゃっぷの放浪綺譚』と往年の貴重ライブ音源を集めた『アーリーデイズ-藤村直樹メモワール』という素敵なソングコレクションを発表している。また、2000年よりフレンズレコードを発足、レーベルプロデューサーとして地元京都在住のミュージシャンの紹介に努めている。彼が手掛けた作品の中では『帰ろう/ オクノ修』は、良質な唄モノアルバムとして、若い気鋭のミュージシャンたちから大きな讃辞を受けいる。イベントプロデュースにもフォークキャンパーズ時代に磨いたリーダーシップを大いに発揮して辣腕を振るっている。
2010年4月27日、敗血症のため死去。享年63。