説明
〈すばらしい演奏にサポートされたエンジェル・ボイス〉
ジャズ評論家/瀬川昌久
独自の美しいヴォイスと心にしみ通るような唱法で人気のある歌手ケティー・ケィのアルバム3作目がリ・イッシューされる。2005年に初アルバム『蓮:HASU~ケティー・ケィ ミーツ レイ・ブライアント~』でデビューして大きな話題となり、続くセカンド・アルバム『Say It』と、ニ作共にスイング・ジャーナル誌のディスク大賞候補作品に選出されるなど、着実に進歩をとげてきた彼女が、’09年夏、アメリカ ロス・アンゼルスで録音してきたサード・アルバムは、アメリカのミュージシャンのサポーティング サウンドといい、彼女の一段と円熟したボーカルといい、近来稀のヒーリング・ジャズの傑作となった。
先ず選曲が良い。ロジャースとハートの2曲、ジョージ・ガーシュインの3曲を始め、良質のスタンダードがずらりと並び、しかも余りにもポピュラーすぎる人気局曲は避けられている。ピアノ、ベース、ギターにヴァイオリンという編成で、ドラムレスのカルテットを組んだのは大成功だった。
最近星の数程出るボーカルアルバムで、こんな快い伴奏はきいた事がない。特にヴァイオリン(Dan Weinstein)とギター(Mark Waggoner)のプレイをきいていると、ボーカルの歌う意味まで、鮮明に増幅して伝わってくるような気持ちにさせてくれる。
このすばらしい伴奏になったKetty-K(ケティー・ケィ)の唄声は、まさにエンジェル・ボイスと呼ぶに適わしい境地に達している。
低い声もよく通るようになり、長く延ばしたハイトーンは、きく者の心に深く染み込むように伝わってくる。表現のテクニックも上達した。
・Someone To Watch Over Meのヴァイオリンのイントロにのったヴァースからの歌いだし、コーラス部に入ってメロディのフィル・インに奏するヴァイオリン、唄のラストの美しい歌い上げ、殆ど完璧に近いボーカルに仕上がっている。
・My Funny Valentineでは、ギターが唄のバッックに語りかける様に参加し、間奏部にソロ・プレイをきかせる。
・You Must Believe In Springは、ギターだけをバックにして、彼女がじっくりと語りかけるデュオの芸を果たす。
ケティー・ケィは近頃宇宙映像と共演スルライブのトーク・ショウを実行したり、読売新聞のホーム・ページに宇宙と生命についての解説を寄稿したりしている。
彼女のAngel VoiceでMoon RiverやFly Me To The Moonを聴き乍ら宇宙への旅を考える企画がすすんでいるようだ。
このアルバムが更なる彼女の旅立ちに連がるに違いない。
瀬川昌久
1) MY FUNNY VALENTINE
2) IT NEVER ENTERED MI MIND
3) ‘S WONDERFUL
4) TEACH ME TONIGHT
5) BLACK ORPHEUS
6) SOMEONE TO WATCH OVER ME
7) I CAN’T GIVE YOU ANYTHING BUT LOVE
8) YOU MUST BELIEVE IN SPRING
9) THEY CAN’T TAKE THAT AWAY FROM ME
10) SENTIMENTAL JOURNEY
11) TILL
Ketty K (vocal)
Henry Franklin(b)
Dan Weinstein(vln)
Mark Waggoner(g)
Gary Matsumoto(p)