説明
一方、原田依幸は自らの演奏行為をとおして「身体」に宿る音の可能性を極限まで追求し、表現の領域をさらにおしひろげることを一瞬も止めない真に革新的な演奏者である。その特異なピアノスタイルから魔法のように紡ぎ出されるピカピカの音の粒立ち。緩急自在、縦横無尽に弾き出されるパッセージは遂に音楽だけしかあらわすことのできない「時間」と「空間」のドラマを瞬時に描き出してしまう。故・篠田昌巳をはじめ、石渡明廣、向島ゆり子、中尾勘二等、世代の異なる音楽家たちが原田を敬愛して止まない理由は時を経てもけっして失われないその「音の輝き」に求められるのではないだろうか。いま、原田が紡ぐ「音の粒」はさらに光度を増している。
鈴木勲と原田依幸。本作はアルバムタイトルに相応しく、二人の天才的個性が白刃のような感性を剥き出しにして真っ向から斬り結ぶ。互いを見据えながら畳みかけ畳み込む技と技の応酬。打々発止の真剣勝負はやがて、血煙を噴き上げて巻き起こる大殺陣の大団円を迎える…。そして、二人の達人が一枚のアルバムを通じて身体表現の極限を究めた痕に残ったものこそ当意即妙の即興演奏で綴られた未聞の「コンポジション」、身体のドラマであったことが実に興味深い。ことここに到っては最早「ジャズ」という言葉は不要だろうが、「これこそ、ジャズだ!」と叫びたい誘惑に駆られる名演だ。2010年作品。
1.ORIGIN
2.Amazin’
3.Pandemonium
4.Lightnin’
5.Desire
6.Revelation
7.Sturm und Drang
8.zun-bararin
9.Denouement
鈴木勲 ベース
原田依幸 ピアノ